周りの人達がキラキラ輝いて見える時。
それに比べて自分は何も持っていない・・。となんだか自信を失って落ち込んでしまった時。
そんな気持ちに寄り添いながらも元気づけてくれる物語「太陽のパスタ、豆のスープ」をご紹介します。
著者は宮下奈都さん。
以前、この方の作品「羊と鋼の森」を読み、その静かで優しい世界観と風景の表現にすっかり魅せられてしまいました。
そこで他の作品も読んでみたいと思い、中でもタイトルが気になった「太陽のパスタ、豆のスープ」を読んでみることに。
タイトルに食べ物が入っている物語ってなんだか心惹かれてしまいますよね。
なんだか最近うまくいかないことばっかりでもうやだ!!と投げやりだったり卑屈になって心がガチガチになってしまっている人。
ぜひこの本を手に取ってみてください。
あらすじ
結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽(あすわ)。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは“ドリフターズ・リスト(やりたいことリスト)”の作成だった。
自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。相手の意見やその場の空気に流れていなかっただろうか。自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長してゆく。自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語。
───裏表紙より引用
自分には何もない、と思ってしまうあなた
あらすじから分かるように、この物語は主人公が結婚直前に破談になるところからスタート。幸せな気分から一転どん底まで落とされてしまう主人公。
突然結婚が無くなったことで、何もかもを無くしたようなような気分に。
自分には何も無いということをひしひしと感じる一方で、周りの人達の頑張る姿が眩しく、そして焦りを感じている姿にすごく共感しました。
焦ったり時には卑屈になったり。もがきながらもゆっくり成長していく主人公を自分と重ねて読むと、なんだか勇気が出てきます。
中でも印象に残ったのがこの台詞。
・・・・嫌だなあ
なんで、みんながんばるの
主人公の口からポロっと漏れたこの言葉が、私の気持ちを代弁してくれているようで心がヒリヒリしました。
頑張っている人を目の当たりにすると「それに比べて自分は・・」と後ろめたくなり、何もかもをシャットアウトしたくなるような気持ちになることが私にはよくあります。
足を引っ張ってやりたい、だとかそんな気持ちは微塵もないけれどちょっと嫌だというネガティブな気持ち。
頑張っている人が嫌なのではなくて、頑張っていることを実感できていない自分自身が嫌だということは分かっている。
だからいつも心の奥底にしまい込んでいた、そんなドロドロした気持ち。
前に進もうと何も努力をしていない人がこの台詞を言ったらイラッとしてしまいそうですが、前に進むために必死にもがいている主人公が言うと心に響いてくるものがあります。
卑屈になっている主人公に対し叔母がかけた一言により、凝り固まったスッと心が軽くなっていくのですが
どんな一言だったのかはぜひ読んでみてください。
その一言に私は、ちょっと泣きそうになった。
今の自分は、自分で選んだことの積み重ね
私が選ぶもので私はつくられる
当たり前のことながらも改めて言われると考えさせられてしまいます。
毎日食べるものであったり、何をするか。
大きなことから小さなものまで、私達は多くの選択をしています。
あまり意識しないでした選択でさえ自分を形作るものになっていると思うと、もっと丁寧に考えていく必要があるんじゃないかと。
おわりに
もしこれが「失意の底から這い上がってくる努力の物語!」みたいなのだったら多分ここまで好きにならなかったと思います。笑
熱量のありすぎる本はちょっと良いやっていう時、ありますよね?
落ち込んでいる時や自信を無くしている時なんかは特に。
普通の女の子が自分の行く先をゆっくり探していく、この空気感が好きになる大きな要因だったのだと思います。
なんだか卑屈になってしまいそうな心を優しく揉みほぐしてくれるような物語でした。
なんだか上手くいかないなあと焦っている人や落ち込んでいる気分に寄り添ってくれる本が読みたいという人、必読です。